一昨日9月16日をもって座る・くらべる一脚展+(プラス)2019は終了しました。今年も多くの来場者に私達の展示を観ていただく事ができ嬉しく思います。ご来場ありがとうございました。
一脚展というのはある意味変わった展示会です。普段から椅子や家具、木工製品を作って生業としているメンバーが集まり展示会を企画し開催しているにも関わらず、会場には価格表示がありません、商品である椅子に惜しみなく座っ頂き、何度も座って、比べていただくことを目的としています。それは一年に一回会場に足を運んでいただいた皆さんに生の声で意見を聞く場と考えているからです。私は更に、一年に一回でも数年に一回でもと、来て頂けそうな知人友人に案内を出して、椅子の評価だけでは無く、互いの仕事の話、近況報告までできれば尚良いと考えています。それは旧交を温めるだけに留まらず、ふと違う世界が見えたり、制作に思いがけない切っ掛けを与えてくれたりするものなのです。来て頂いた人には逆に日常とは違う世界を垣間見て少しでも何かを感じてもらえればそれがささやかなお土産かなと、勝手ながら納得しています。最終日には多くの知人が会場に足を運んでくれました、また初対面の方とも、一日中話し続けて、夜帰宅した時には声がかすれていました。多くのエネルギーを頂き感謝、お礼申し上げます。
最終日には胸のブローチ(
村上千洋子さん、
茂樹さん作)とダブル北島でみなさんを迎えました・・。
今年も一脚展 +(プラス)に参加し新作椅子を出品しています。このページからの告知をすっかり失念してしまっていたので、会期は16日(月曜日)まで残り2日となってしまいましたがお知らせします。会場は昨年同様、新神戸の
竹中大工道具館(9:30 ~ 16:30、入場は16:00まで)15人のメンバーの新作椅子に加えて、今年はプラス企画で「六甲山の樹 × 木工家」と題した地元六甲山の木材を使った雑木プロダクトに一脚展全体で取り組んだ展示があります。季節が良くなってきたこの連休の後半、是非会場にお越しください。私は16日の最終日一日中在廊しています。
(16日、14時からギャラリートークがあり出品者がそれぞれの椅子を解説します)
参加された皆さん、とても良い仕上がりの自分で作った自分だけの木箱が出来上がりました。講師も慣れない事で誉め方が足りなかったかなと終わってから反省しますが、後でこれを見たら自信を持って周りの皆に自慢して下さい。仕事が終わってからや家事に一区切りつけて夜の7時から公民館に集まって2時間の工作作業、どんなものかと始まる前は心配もありましたが、そんなことは無用の皆さんの集中力に先ずは感心しました。5回の日程で初回はまあ和やかに始まったものの2回目以降は各自目の色が変わり、着々と工程をこなし、5回目で完成、また和やかな笑顔で仕上がった作品を持ち帰りました。初回から受講生の皆さんにお願いしていたのは、私が考えた箱を仕上げるまでの工程を終えた後、5回目の残り少しの時間ででも各自で考えたオリジナルのアイデアを加えて欲しいという事、これが今後本当にDIYに繋がるかなと思ったわけです。実際にそこが本当に良かったです、自分で探した蝶番をつける人、取っ手を作ってつける人、自作の焼印で自分のマーク、ステンシルで名前入れ、革の取っ手を用意した人、絵付け等、そこで格段に仕上がり感が良くなり、まさに自分だけの宝箱になりました。また途中欠席でなんとか箱までは仕上げたという人は持ち帰って何かが加えられると思います。最後の会ではまた機会を作って次回持ち寄って見ましょうか、なんていう話も出ました。参加された皆さんお疲れさまでした。そしてアトリエKIKAの仕事とは別に珍しい機会でしたのでここで紹介しておきます。
近年、こういう形での教室、1日で何かを作るワークショップ、物つくりを教えて欲しいという依頼は多いです。普段は職業的にそういうところに関わっていない方々の意欲には感心させられますし、世の中の傾向としてとても良い事だと感じます。アトリエKIKAの一人親方はまだまだ本人の制作にも力を入れたいので十分にその時間は作れませんが、昨年から聞いている依頼(どれも忘れてはいません・・)も保留のままなので少しづつ機会を作りたいところです。
「こひのぼり」はもちろん屋根より高い鯉のぼりのこと。自身の子供が5月5日に生まれた事にちなんで初めて開業するゲストハウスの名前をそう決めたそうです。そして先日まさにその日に正式オープン(お知らせが遅くなりました)。1枚目の写真左がオープニングセレモニーを前に期待と緊張の表情のオーナー岡田祐一郎さん。振り返ると1年前のゴールデンウィークに知人に連れられ淡路島のうちの工房へ初めて来られ、開業に向けての想いを熱く語って、その日まで何も予定していなかったのに、家具はお願いします!と帰って行かれたのです。その後も会う度に想いが膨らんでいる事が感じられ、そして昨年末から段階的に制作を開始する事になりました。家具制作のテーマはプリミティブ、その解釈は人によってさまざまですが、そんな言葉が一つあった事が計画をブレずに進めるのに良かったかなと感じます。
カウンターの写真はトリミングしてあえて短くしてますが(笑)実際は4m以上あります。カウンタースツールが少ないんじゃない?そう、若きオーナー、計画の終盤は予算の調整から家具を全て頼めないと正直に伝えて頂き、予定の半分5脚を先ずは制作。予算を捻出できたらまた頼みます、と。椅子が無きゃお客さんにスタンディングで飲んでもらおう、そんな柔軟さもいいですが、とりあえずオープンに間に合わす為 Iケア・・で10脚揃えて来るので今回はここまでで、と言わない硬派なところも又いいです。
2階がドミトリー形式の宿泊施設、1階は飲放題のビールが売りの飲食店(今のところ食の方は持ち込みのラフなスタイルらしいです)
連休以降の宿泊予約状況は満室の日もあったり、なかなか埋まらない日もあったりだそうですが初めて挑む職種の船出は途中にも書いたように期待と緊張の日々だと思います、今は何より広くに知ってもらって先ずは1階の飲食(交流の場を目指したパブのような感じですね)に足を運んでもらうと「こひのぼり」の不思議な雰囲気を感じて楽しんでもらえるのじゃないでしょうか。順調に軌道に乗ることを私も期待し応援しています!
全体を知るには
「こひのぼり」のホームページから。
さあスタート前!オーナーの岡田さん(左)。
棚には
村上千洋子さん制作、
村上茂樹さんプロデュースのこひのぼりクッションとグッズ、もちろん販売中。
オープニングパーティー終了後は皆それぞれ、この日届けたカウンタースツールが機能し始めたかな。
3本脚ハイスツール /SH740
ヨーロピアンオーク(ナチュラル)×ブラックオーク oil塗装
厚さ50mm、φ35ommの大きめの座面がしっかりと体重を支えます。
脚の付け根、鉄の三脚は
noniturn metal design(川口鉄工所)の川口さん制作、
小さなスツールの部品をスケールアップ、3本の長さに変化もつけています。
大きな机を作ることは好きだ。厚みのある材料なら尚良い。制作時は重さが身体を痛めつけるし、立米(立方メートル)単価で買う木材は材積が多いと価格も上がるので、依頼者にも制作者にも負担は大きくなるが、大きく重みがある机のある部屋は何とも落ち着くと感じる。そして良い空気が漂うとも思う。しかし机の存在をそんなに過信だけしていてもいけないのでそれは何故かと考えると、そこに集まり周りに座った人達が、天板の大きさや如何にも重そうな姿に安心し、身を委ねられそうと感じる事が一つにありそうだ。又その安心してリラックスした人達の様子に他の人達も引き寄せられ、場が和めば皆は楽しくなり良い空気感も生まれるのだろう。
立派な木の存在感を借りて、又寸法やディティールの作りにも気を使って作っているので、制作者としては良い木だ、良い机だという話題も少しは欲しいところだが、そこに集まる人達がそんなことを意識せず大きな机に身を任せてはいるが存在を感じていないくらいの時の方が、木が静かに良い気を発してその空間を心地良い場所にするのかも知れない。それでミッションの達成なのだ。
この机と椅子(テーブルとベンチ)を作る前に依頼者と空間の設計者と三者で話をした時、京都大学前の進々堂の机と椅子、その使われ方が良いという話になった。その後やはり京都のN氏宅に以前作った机と椅子を見せてもらったりもした。使う目的も材や大きさも違うが、どちらもその場所を心地良いものにするのに重要なものになっている。前者は木工芸の人間国宝が作ったものだと知ってそこに座る人が今では何割いるのだろう。後者も制作時N氏と寸法や材種、木の構成や細部に綿密な打ち合わせをして作ったがここを訪ねる人にそれは分からない。しかし確実にその場を作るベースとなっている。
納品が完了した京都ゲストハウス「こひのぼり」の1F飲食店スペースの机と椅子。
営業は今春からだがここに大勢の人が集まって来て楽しく有意義な時間を過ごして欲しいと願うばかり。
ブラックオーク材/2,100 × 940(880) × 710 /2,100 × 385(340) × 410 (写真は納品前)
N邸のものはクルミ材 /天板 2,560 × 1,100 の安定感、ミーティングや会食に活躍の様子。(2010年制作)
こちらは「こひのぼり」2Fベッドルームの中、積み上がったベッドの谷間にある不思議なリビングに置かれる机。この周りでもやはり集まる皆の話が弾むといいなぁ。
栗材/2,400 × 750 × 300/t=80 (写真は納品前)
以前からコートハンガーやカウンタースツールを使って頂いているA子さんの部屋にTVボードを作りました。デザインやプロデュースの仕事で日々忙しくする彼女は部屋に戻った時にはきっと心静かに気持ちを落ち着けたいだろう、それを叶えるようにマンション最上階の部屋は淡い色合いが基調で確かに心地よい。さて少しボリュームがでる家具(TVボード)はどんなデザインで材質は何がいいだろうか、淡い色を使いたいけど無表情な材はA子さんらしくない、依頼を受けてから長く考えさせてもらった結果、フランスから届いたマロニエという木の突き板を天板と扉に使うことに、表情に躍動感が現れました。
タモリさん海外へ行けるようになって良かったなぁと、先ほど見ていたブラタモリの訪問先はパリ。今日は番組の内容はともかく街中に植わっているマロニエの街路樹が気になってしょうがなかった・・。
シャンゼリゼ通りは勿論、街中にこの木が多いのは、かつて地方から人々が馬車でパリに向かった時代、木から落ちたマロニエの実を遠路荷物や人を運んだ馬達のご褒美にする為に植えられたのだとか。真偽の程ははわかりませんよ、しかしちょっとしたストーリーに樹木へのイメージが膨らみますね。では御堂筋のイチョウの木から落ちる銀杏は誰の為?と思うのは関西人?
マロニエ材はベージュの淡い色調ながら赤身と白太の境界線が明瞭で使い方次第で大胆にも。
突き板制作/安多化粧合板株式会社
スローダウンステーで扉の開閉はスムーズ。
真鍮の扉ツマミはヨーロッパアンティークの家具に付いている鍵がモチーフ、それをシンプルにデザインしてみた。繊細な感覚で制作してくれたのは
noniturn metal design(川口鉄工所)の川口勝弘さん。マロニエと真鍮が相性良く、引くという機能も良好です。
中央部背面はビデオデッキや機材の配線を容易にする事と、こもる熱を逃がすためにオープン。
『COWBELL』はKOMEYA DESIGNの山下くんが作るスマートフォンケース。開発の頃から気になっていたので私も一つ手に入れました。廃棄されるはずのウエットスーツ素材を使って作っているそうで、その質感も良く、パッケージにも書かれている様にフィット感が抜群に良いです!
山下くんとは美大の同級生、共にID(インダストリアルデザイン)を専攻して4年間を過ごした仲、真面目に課題に取り組んだり、そうでなかったり・・デザイナーになるには見聞を広めろとよく遊んだり、よく遊んだり・・だったかも知れません。それでも今思うと基本を学んだという授業はいくつかあり、一つは「環境生態学」という選択授業。80年代ではぼちぼちと耳にする事も出てきた「エコ」と略されていない「エコロジー」(=生態学)という言葉を私はこの授業で初めて認識しました。極端に簡単にすると、雨が大地に降って、川となり、海にそそぎ、太陽の熱で蒸発し、雲になり、また雨が降り・・・そんな循環の理解を深めたところにエコロジー的思考があると、インプットされたように思います。
話は『COWBELL』。
大手企業のインハウスデザイナーを経て今は独立して仕事をしている山下くんは湘南・茅ヶ崎在住、ここはベタな言い方をすると日本のサーファー文化発祥の地、確かに波さえあれば平日でもサーファー天国、しかもファッショナブル。オーダーウエットスーツを作る店も多いのだとか、だけど逆にトレンドを外れた素材は早々に処分となる事は否めないようで、そこに着目した山下くんはその不必要になったカラフルな素材を使ってハンドクラフトの手法で作れるスマートフォンケースを開発しました。湘南の身近な素材を肩肘張らずに使った事に感心。企業が宣伝に使う「エコ」とは違った素直なエコロジー的思考がいいと思う。
COWBEL ストーリー動画
COUBELL 記事
COWBELL 購入サイト
作業中はポケットに携帯が入っていることが違和感で嫌だったので今まではほぼ不携帯、これで ok かな。
フックが2種類。
湘南の皆さんの写真お借りしました。ヴィヴィッドな色もいい。
工房作業中、普段はこんな感じで radiko が音量 max で鳴ってます。木製スタンドは非売品(笑)
でも今日は大事な連絡が何本か入るという日には身に付けとかないと不便だったんですよ。
新しい年が始まり、アトリエKIKAは昨日3日から作業をスタートしました。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。
昨年とても印象に残った制作の一つ、そこにまつわる「MOON CALENDERの話」、または「物語」と言ってもいい程だけど私が知るのはそのほんの一部、そこを上手く切り取って紹介できればいいのだが。
確か1990年代初期から
キャニオン・アンド・ビーチ(canyon & beach)によって25~30年近く制作・販売を続けられていたMOON CALENDERは数年前に今後の継続を断念した事を発表したそうだ、それを知った長年のユーザーである
AOKIWORKSの青木京さんは次の年以降手に入らない事にショックを受けた。そこで考えその制作・販売を自ら引き継ぐという決断をし、想いを申し入れた。良いものが故競合は多かったそうだが熱意と誠意でその引き継ぎが彼女達に許された。そして2019年版も何事も無かったように存在し、濃紺の紙の上で月の形を示し続けている。余りにも簡単に書いてしまったが両者の想いや話し合いの経緯は簡単なものでは無かっただろう。このカレンダーの凄いところは初期から基本デザインが全く変わっていない事、そして今後も変えない方針は貫くらしい事。私ももの作りをしている者として、何も変えずに一つのものを作り続ける事の難しさはよく分かる。デザインや品質を変えないと言う頑固さよりも、しなやかに毎年同じものを供給し続けられる柔軟さが必要なのだろうと想像する。
思い出す言葉がある。私が独立前に早川謙之輔さんの杣工房にいた頃、師は示唆を含んで言った。
「20年、30年ぶりに私の所を訪ねてくる人は皆、杣工房はいつまでも変わらなくていいですね、と言う」
「しかし、私はいつも変わろうとしてきた、その時々に合わせて必死に変わろうとし続けてきた」、「分かるか北島」
「・・はい」
当時も分かる気がしてそう答えたがその後独立し20年以上経った今の理解とは違っていた気がする。
AOKIWORKS の青木京さんからcanyon & beach へ、また今後制作・販売を共にする
ツギキ(tsugiki)へ感謝を込めて渡すムーンカレンダー用の額を作って欲しいと依頼された。ツギキはデザイン業務もするが、なるとオレンジを育てる果樹園でもある、「その木を材料に使おう」がこの制作の唯一の約束。
試行錯誤した結果、最良の方法と考えて額の形をしていない二枚の板を作った。青木さんがそれぞれにこの感謝の品を手渡す場面に立ち会えたが、その行為に皆さんはとても喜んでおられた。ものを作る事を通じて素晴らしい「物語」に出会えた。
2019、1月はまず新月に向かうのだなと。
新旧のパッケージ、ロゴ(手前が新、奥が旧)
朽ちかけた なるとオレンジの表情をそのまま板に、無塗装。
今年も大晦日の夕方この時間は仕事を一区切りつけて、一年を振り返る時間にしてみたい。毎年思うのは、何より人との出会いに始まり、話が進みお互いの理解も進み、物を作るという仕事をさせてもらっているという事、また仕事以外でもいろんな楽しみを多くの出会いからもらった気がしています。初対面の突然の出会い、古くからの知人との再会、友人やお客さまからの紹介による出会い、その形は様々、そしてその関係は太くても細くても長く続く事をいつも願うものです。
ただ今年は残念な別れが一つありました。それは父親が他界した事。老衰だから仕方ないと言えどもその瞬間いろいろな想いが込み上げてきましたが、最期の時に母も私達夫婦も息子達も家族皆が立ち会えたことが、逝く父にとっても、また残される私達にとっても不思議と穏やかな時間をひと時共有できたと感じています。
口数の少ない父親でした。ただ淡々と黙々と自分のするべき事をしていたという印象が今でもあります。饒舌で無いのに何故か語学を学び英語とスペイン語が話せた為か1960~70年代にかけて南米への日本人移住事業に関わり最初は神戸からの移民船で単身ブラジルへ赴任し、姉が7歳、私が5歳の頃、今度は家族を連れてアルゼンチンへ赴任したのです。移住者と共に開拓農業をしていた訳ではないので写真はコミュニティーのトラクターに跨がり記念撮影ですが、片側を見ればアンデス山脈の最高峰アコンカグア、反対側を振り返れば地平線が見えるような乾いた大草原、レンガ積みの小さな家に住み隣の家は数キロ先なので見えないのです。そんな所に5〜6歳の少年が住んだ記憶はもう半世紀も前の事でも消える事はありません。色褪せてはいるものの思い出せる風景(視覚)また嗅覚や味覚で憶えている記憶は少なくはなく今でも意識すれば引き出してくることが出来ます。車が駆け抜けた後の砂埃の景色、乾燥トマトの酸味、濃厚なチーズの匂い、今回は記憶を辿って幾らでも書けそうですが、そんな物、事、また人々に出会わせてくれた父に感謝を想う大晦日となりました。
今年も皆さま本当にありがとうございました、新たな出会いを楽しみに、良い新年をお迎え下さい。
「大好きな人をブローチにしてみました」というタイトルの村上千洋子さんの個展を観てきました。「よかったです!」という感想。何がとは一言で言えないけれど、一つ一つは手のひらに乗る程の小さなものだけど、ご自分で選んだ大好きな人の顔をひと針、ひと針丁寧に刺繍で仕上げた108人(108組)の顔のブローチは何かとても多くのメッセージを1点ずつが秘めているように感じました。壁面に並ぶ顔を、コルビジェだ、バスキアだ、タモリさん、誰だこれは?という軽い楽しみ方から入って、この人をなぜ選んだのか?いつ出会って、どの部分が好きでどんな影響を受けたのだろう?私も好きな人が多いという事も共感できて作品を好きになった要因だと思いますが、誰だか分からないという人物も多かった事も作者の興味の広さ深さに関心を持ちました。会場の壁に貼られた千洋子さんの挨拶文もなぜこのブローチを作り続けているのか分かりやすく明快に書かれてあります、究極だけを抜粋すると、・・・『感謝』と『敬意』そして『愛』を込めてあると書かれています。誤解も生じる短い抜粋を申し訳なく思いますが、私がシンプルに解釈するとモチベーションの素は『好き』なのだろうなと思います。その人が好き、その人の作品が好き、その人の表現するものが好き、そしてご自分も作ることが好き、何かを表現することが好き、その姿勢がまた出来上がったものによって人を喜ばせたり感動させたりする。我に返りものづくりを生業としている者としてもこの『好き』という純粋な出発点は忘れ失ってはいけないと思うのです。
作者村上千洋子さんと(上)このページであまり自分は出ませんが良い一日だった表現としてアップ!
ご主人の村上茂樹さんと(下)怪しい写真ですが、愛溢れる方です、仲良し!
そして数百枚のレコードを持ち込んで会場の良い空気を作っていました。
もう一つ嬉しかった事。茂樹さんお会いするのがまだ二度目なのに、私が作ったもの数々の写真をH.P.などで見ているうちに頭の中に流れ鳴り続けた音楽があると、CDにしてプレゼントして頂きました。ここは又深く掘り下げたいと思うのですが、形、造形、が音、音楽に変換するという事を初めて経験したように思います。その後毎日聴いています、そう、そんなふうに作っていますと呟きながら。
小学四年生の途中、私は転校生として神戸に戻って来ました。若いO先生のクラスは明るく楽しい雰囲気で何か困ったという記憶は無いものの、人見知り無く話せる性格でなかった私はしばらくの間はもぞもぞ、、しかし当時走ることには自信があって足が早かったので新入り早々運動会のリレーメンバーに選ばれ、学級対抗リレーの優勝チームの一員となったのです。後は言うまでもなく、一芸は身を助くで転校してきた事など関係なくなり、活発な友達たちと休み時間も放課後もいろんな遊び方を見つけては校庭を走り回っていたという記憶があります。(こんな事も思い出した)1970年代は光化学スモッグ注意報、警報なるものがたびたび発令されて、そうすると校庭の隅に有った道路標識大の白い丸が赤い丸に裏返され生徒たちは校舎から出てはいけなくなるのです。教室の窓からその赤丸をやんちゃ達が恨めしそうに眺めている時、O先生は相撲のような事をしたり(今ならバツ、かな)皆で歌ったり、私たち生徒とよく遊んでくれていたなぁ、という遥か彼方の思い出を引っ張り出す機会がありました。
今回そんな事を思い出すのはそのO先生からお孫さんの小学校入学お祝いに机の制作を頼んで頂いたから。本当に長いお付き合いに感謝します。
彼らにもこれから沢山の楽しい思いでが出来ることでしょう。
入学にはもう少し年数のある弟君の分も一緒に! 横に置いていると木目はつながりますよ。
早速勉強、お絵描き、まわりを走り回って、おどけて、机の到着を喜んでもらえたようです。
いい笑顔の写真は残念ながら出せませんが「机のおっちゃん」のカメラにVサイン頂きました!
小学校入学時にというタイミングで作る机はいつもシンプルに、大きくなって独り立ちするときもこれを持って家を出てもらえればと制作者は思う。
来週の月曜日11月12日、和&イタリアン「十皿」が大阪にオープンします。オーナーシェフ真野淳さんからの依頼を受けて木のお皿を新しく作りました。店名のとおり10品がそれぞれ作家違いの陶器やガラスなど、順に器を替えて盛付けされ出されるコース料理との事、それぞれのお皿の料理がその日の素材を活かした料理人渾身の一皿となることでしょう。木のお皿も定型を席数分作るのではなく、まさに選んだ素材を活かし、この材料からはこの仕上がりにしかならないと言う味付けを心がけています。今回は料理の盛り方、サービスの仕方などをお聞きして途中からは仕上がり感をおまかせ頂き、木のお皿と言うお題に対して及ばずながらコース料理の一皿分を担うつもりで制作させて頂きました。新しいお店には他にも沢山の新しいお皿が揃えられたことでしょう、また今は真新しい店内ではお客様を迎える仕込みが着々と進んでいることでしょう。真野シェフの新しいスタートをお祝いし「十皿」の発展を楽しみにしています。
材料はチカバノゾウキ(近場の雑木)/淡路島のニレの木を使っています。真野氏は淡路島の出身、食材にも淡路産を多く使うそう。
写真はモノクロにしています、実際の色、質感はお店で料理と共に味わってください!