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『ナラ枯れ小楢のテーブル』

2022-06-14

「ナラ枯れ小楢のテーブル」このネーミングがいいのかどうかは何とも言えませんが・・

ナラ枯れとなった小楢(コナラ)の木を伐ったことから板材ができテーブルとなったので、そのままの名前です。

テーブルは小楢の木があった山の持ち主のお宅の娘さん夫婦の新居のために依頼され、先日無事に納まりました。

 

 

写真にキャプションをつけながら工程を紹介しますので、とても長いですが興味のある方は最後まで是非ご覧ください。

 

 

 

 

私達が淡路島(中部)で「ナラ枯れ」という言葉を聞き始めたのは約2年前ほどからですが、おそらくその1〜2年くらい前からは進んでいたのでしょう。

ナラ枯れはカシノナガキクイムシという虫が木に無数の穴をあけることで立木が枯れる現象で、ここ関西地方だけでなく日本各地で見られるようです。

 

※ 楢や樫の木の類の比較的巨木にカシノナガキクイムシが穴をあけ、ナラ菌を持ち込んで繁殖させ、それを食べて成長しているようです。木の根元周囲にきな粉の様な木屑が多く見られたらかなり木の内部まで入っています。成虫になるとその木を出て行き、一度アタックした木に再びアタックする事は無いようです。ですのでナラ枯れて伐採後板になった小楢から幼虫も成虫も見る事はありませんでした。また一説ではその地域の被害は約5年ほどで落ち着くと聞きます。

 

幹をよく見ると多くの穴があいているのを見つけることができます。(写真は南あわじ市の小楢)

最近は我が家の裏山のクヌギの大木やウバメガシなどにも穴が多く見られて、子供達が小さかった頃カブト虫やクワガタを取りに来た木が枯れてしまうと思うと寂しい思いもありますね。

 

枯れて、いずれ倒木となると危ないのでとこの木は伐られることとなりました。

 

山の斜面の木は伐採後、ここからある程度の長さがあるまま搬出するのが大変です。

※ 伝わり難いですが里山の木を木材利用する際、この工程が一番の課題だと思います。(!!ここは強調しておきます)

 

搬出できて木材として使えそうな幹を製材し桟積みをしています。

製材時の写真が今回はありませんが、洲本市五色町で頑張ってくれている製材所に依頼をしました。

 

板になって分かったのは、カシノナガキクイムシがあけた穴は木の根元だけではなく幹の上部まで同じ様にあいていて、そして白太(幹の外周)の柔らかい部分だけに留まらず赤身(幹の内側)にまで進んでいるという事。

 

 

—– 桟積みをしてから約一年が経過 —–

 

新居のテーブルをこの木を使って作ろうという計画になったので、ある程度虫穴を除いて物になるか、荒木取りをします。

虫穴のあいた板も見ようによっては面白く、味のあるものが作れそうですが、今回は食卓という事もありできる限り見える部分には使わないことにしました。

 

虫穴が有り除いた部分はかなりの材積です。

一本の木を枯らす、小さな虫の生命力を感じずにはいられません。(黒い小さな点に見えるのが全て虫穴)

 

そこそこの径がある木から細い板を作るのは日頃の制作からすると何とも抵抗がありましたが、それでもテーブルが一台作れそうな材を木取りできました。

通例とは少し違いますが約1.5倍くらいの材積に木取りしたものをここから人口乾燥機に投入します。(テーブルになった後、エアコンなどを使う室内環境で木が割れたり反ったりしない為に人口乾燥機で含水率を下げます)

 

約3週間の投入で15%前後まで含水率を下げました(業者の方によると本来もう少し下がるのですがとの事)、それ以上過乾燥にしない方がとの判断でそこまでとします。

1年間自然乾燥をしている事もあり、大きな割れや反り捻りは起きていません。ひと安心。(ここから更に自然環境に馴染ませる養生をします)

 

養生後、実際の仕上がり寸法をねらって木取りを再度行ないます。板幅はランダム、枚数の多いハギ合わせになりますが組合せを悩みながら決めて行きます。

 

天板のハギ合わせ作業〜。

 

脚の組立て作業〜。

 

赤身の深いところまで入った虫穴はどうしても天板上に残ったので、細い木で埋めて行きます。

 

木口にも現れた穴を埋めます。

 

仕上がった天板にアク止めの下塗りをすると仕上がりの色が見えてきます。虫穴は全て見えなくなりました。

 

天板裏側にはカシノナガキクイムシが居た痕跡が残ります。後にナラ枯れの被害も落ち着いて忘れられた頃、あの時期の小楢だなと分かるかもしれませんね。

 

 

1,500 × 850 × 730 /オイルフィニッシュ

「ナラ枯れ小楢のテーブル」完成しました。

 

そして新居に届けて予定の位置に納まりました。

テーブルの形はシンプルな直線的なものが好きだというご希望をできるだけお聞きして。

部屋の床材を見せてもらっても納得、板の雰囲気もラスティックなものが好みの様なので今回の小楢の選択は間違いなかったですね。

仕上がったテーブルをとても喜んでいただきました。

 

若いご夫婦の奥さんが育った場所の裏山に育った小楢の木で出来たテーブル。

ここまでの行程もそうですが、これから先も良い物語が生まれそうな気がして、納品後何かとても嬉しくなりました。